コラム

コラム
シンボル

身近だったのに今や絶滅を危惧される植物たち

「昔はあちこちで見かけたのに、最近は見ないなぁ…」そんな草花が、皆さんの周りにもありませんか?ふとした日常のなかに、自然の彩りとして寄り添ってくれていた植物たち。名前は知らなくても、その色や形、香りに不思議と心が癒されたものです。

しかし、近ごろはそんな草花たちが、静かに姿を消しつつあります。今回は、かつては身近で見ることができたのに、絶滅が心配されている植物たちに目を向け、私たちにできることはなにかを一緒に考えてみましょう。

いつの間にか見かけなくなった草花たち

かつてはどこにでも咲いていた、懐かしい草花たち。今では「絶滅危惧種」として、守られる存在になってしまったものも少なくありません。環境省や都道府県がまとめている情報などをもとに、絶滅の危機にある植物をご紹介します。

カワラナデシコ(河原撫子)

秋の七草のひとつとして親しまれてきたカワラナデシコ。細かく切れ込んだ花びらが風に揺れる姿は、とても愛らしく風情を感じさせます。かつては田んぼのあぜ道や川べり、草むらなど、身近な場所でよく見かけましたね。今では、絶滅危惧に移行する一歩手前の準絶滅危惧種に分類されており、地域によっては絶滅の危険性が高い植物として扱われています。

キキョウ(桔梗)

秋の七草のひとつとして知られるキキョウ。青紫の星型の花はとても印象的で、凛とした美しさがあります。昔は田んぼのあぜ道や野原、山すそなどでよく見かけた馴染み深い草花ですが、今では絶滅の危険が増している植物として扱われています。

フジバカマ(藤袴)

ふわふわとした藤色の小花を咲かせるフジバカマ。桜餅のような香りをもち、「アサギマダラ」という蝶が集まることでも知られています。草丈が1m~2mと高く、川沿いや草むらなどでよく見たという方も多いのではないでしょうか。今では、川岸の護岸工事などによって激減しており、絶滅危惧の手前にあたる準絶滅危惧種に分類されています。

ササユリ(笹百合)

笹のような細長い葉をもち、淡いピンク色の大きな花を咲かせるササユリ。地域によってはヤマユリとも呼ばれ、市や町の花に指定している自治体も多くあります。それほど愛されてきた花ですが、今では見かけることが少なくなってしまいました。近い将来、野生では絶滅の危険性が高い植物に指定されています。

ミズアオイ(水葵)

水田や水路、湿地などに自生し、澄んだ青紫色の花を咲かせるミズアオイ。夏から秋にかけてひとつの茎に10~20個ほどの花をつけ、涼しげで可憐な姿を見せてくれます。日本では古くから染め物に使われたり、食材として利用されたり、和歌に詠まれたりと暮らしのなかで身近な存在でした。かつては田んぼの周りなどでよく見かけましたが、近い将来、野生では絶滅する危険性が高い植物として扱われています。

カザグルマ(風車)

ツル性の植物で、直径10cmほどもある大きな紫~白い花を咲かせるカザグルマ。花びらのように見えるのは”がく”で、風車のように広がった美しい姿が特徴です。かつては、森の端や林のすそ野などの身近な場所でよく見られましたが、今では準絶滅危惧種に指定され、自然公園や保護区、植物園などで管理・保護されています。

オキナグサ(翁草)

赤紫色や青紫色の清楚な花を、うつむくように咲かせるオキナグサ。花が終わった後には、タンポポのような綿毛をつけるのが特徴で、その姿がおじいさんの白髪に見えることから「翁草」という名前がつけられました。かつては野原や草地でよく見られましたが、今では準絶滅危惧種とされ、地域によってはさらに深刻な危機にさらされています。

国内希少野生動植物種一覧 | 自然環境・生物多様性 | 環境省

第5次レッドリスト(植物・菌類)の 公表について(お知らせ) | 報道発表資料 | 環境省

なぜ植物たちは姿を消し始めているのか?

私たちの身の回りから懐かしい草花の姿が少なくなってきた背景には、大きく分けて3つの原因があります。

暮らしの変化

昔は山や畑、田んぼの周りが人の手で丁寧に手入れされていました。今では、そうした場所が手つかずで荒れてしまったり、住宅地や道路に変わっています。また、食べものが少なくなった動物たちが植物を食べてしまう「食害」も増えてきました。私たちの暮らしが便利で豊かになる一方で、草花たちは少しずつ居場所を失っているのです。

外来種の増加

「きれいな花だから、お庭に植えてみたいな」「育てやすそうだから、うちでも育ててみよう」そんな思いから、海外の植物が日本に持ち込まれるようになりました。けれど、そのなかには繁殖力が強く、もともとあった草花たちの居場所を奪う植物もあります。便利さや好みに合わせて持ち込まれた植物たちが、気づかないうちに自然のバランスを崩し、身近な草花を絶滅の危機に追い込んでいるのです。

盗掘

野山で見つけたきれいな草花を「自分の庭にも植えてみたいな」と思って持ち帰ってしまう…。そんな悪気のない行動が、知らないうちに植物の絶滅を早めてしまうことがあります。「自然のなかで出会う草花は、そこに咲いているからこそ美しい」そんな気持ちを大切に、植物の命をそっと守っていきたいですね。

植物の命を守るために私たちにできること

植物の命を守ると言っても、なにか特別なことをしなくても大丈夫。たとえば、散歩中に草花を見かけたら、「これはなんていう名前かな?」とちょっと立ち止まってみるだけでも植物を守る第一歩になります。また、植物の様子やどんな場所に咲いていたかなどを家族や友人、近所の子どもたちに話してみるのも、植物の命をつないでいく素敵な行動です。

もしできるなら、庭やベランダで昔からある草花を育ててみるのもいいですね。園芸店や通信販売では、日本に昔から自生してきた在来種の種や苗も手に入ります。自然とのつながりを感じ、草花に愛着をもつことが、植物たちの命を守る大きなきっかけになるはずです。

まとめ

昔はあちこちで見かけた植物たちが、いつの間にか姿を見せなくなったのは、やっぱり寂しいものですね。でも、私たち一人ひとりのちょっとした気づきや行動が、植物たちの命を守る力になります。かつて身近だった植物たちが、また子どもたちの記憶に残る日が来るように。皆さんも、身の回りの植物にそっと目を向けてみませんか?