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物忘れと認知症の違い

人間も動物も皆、年齢を重ねると身体機能は衰え、中でも脳機能は「物忘れ」という形で顕著に現れます。これは生き物として自然な現象の1つで、「物忘れ=認知症」と言い切れるものではありません。しかし、認知症の初期症状として物忘れが増えてくる場合もあり、注意が必要です。
 
今回は、物忘れと認知症を見分けるポイントについてご説明します。
 

多様性のある記憶

記憶には情報を脳に取り込む「記銘」、その情報を一時的もしくは長期的に保存する「保持」、保存した情報を必要に応じて引き出す「想起」という3つの段階があります。つまり記憶とはただ覚えるだけではなく、思い出すまでをひとまとめにしたものです。
 
そして、記憶は保持時間によって感覚記憶(数秒)や短期記憶(数分~数時間)、長期記憶(数日~数週間以上)に分けられます。また、記憶の内容によって意味記憶(知識)やエピソード記憶(思い出)、手続き記憶(身体が覚えている動き)などの多様な種類に分類されます。それぞれの記憶に応じて海馬や扁桃体、小脳、前頭前野など、異なる脳の領域が関与する点が特徴です。
 
そのため、記憶に問題が生じた場合は「覚える」「キープする」「思い出す」のどの過程に支障があるのかに加え、うまく機能できていない脳の領域を見極めなければなりません。
 

加齢による物忘れ


「あの芸能人、なんて名前だっけ?」「今、何をしようと思ったんだったかな?」というちょっとした物忘れは誰にでも起こります。歳を重ねるほど物忘れが増えやすくなるものの、何かの節に「ああ、そうだった」と思い出せる場合は、それほど心配する必要はありません。
 
物忘れの原因には自律神経やホルモンバランスの乱れ、ストレス、睡眠不足、栄養不足などが挙げられ、加齢も大きく影響します。これは脳の衰えによって情報を引き出す「想起」の力が低下するためで、記憶そのものが失われているわけではありません。日常によくある例として、夕飯を食べたことは覚えているけれど、何を食べたかはすぐに思い出せないといった物忘れはこれにあてはまります。
 
しかし、脳は加齢によって衰えるばかりではなく、刺激を受けている限り成長し続けることがわかっています。そのため加齢による物忘れを予防・改善するには、食事や運動、睡眠などの生活習慣を見直すと共に、脳に刺激を与え続けることが大切です。
 

認知症による物忘れ

認知症とは、脳の病的変化によって記憶力や理解力、判断力などが低下して日常生活に支障をきたしている状態を指します。発症原因によってさらに細かく分類され、代表的なものはアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
 
その中でもアルツハイマー型認知症は6割以上を占め、初期症状には物忘れが見られます。短期記憶と密接に関連している海馬を中心に脳全体が萎縮してしまう疾患で、記憶そのものが丸ごと抜け落ちて物忘れの自覚がないという点が特徴です。
 
例えば夕飯を食べたことをまったく覚えていない、買ったことを忘れて何度も同じものを買ってくる、何度も同じことを話す・尋ねるという状況があてはまります。症状が進行すると通い慣れた場所で道に迷ったり、食事やトイレの仕方がわからなくなったり、身近な家族のことがわからなくなったりなど、自力での生活が困難になる方も少なくありません。
 
認知症の発症を完全に防ぐことは難しいため、早いうちから認知症のリスクを高める生活習慣病の予防や改善に努め、生活習慣を見直しながら毎日を楽しく過ごすことが大切です。また、認知症は早期発見・対策が進行を抑制する鍵となります。気になる症状がある場合は早めにかかりつけ医や専門医の受診を検討しましょう。
 


加齢による物忘れ認知症による物忘れ
自覚症状ありなし
記憶体験したことの一部を忘れる体験したことを丸ごと忘れる
日常生活の支障なしあり

 

自分らしい生活を続けるために


今回は、「物忘れ」と「認知症」の違いについて解説しました。活き活きと人生を歩み続けるためには、食事や運動、睡眠などの生活習慣を見直すと共に、日々の生活を楽しみながら脳に刺激を送り続けることが大切です。フラワー心理セラピーをベースとした健康長寿のお花選びサロンでは、花の感触や香り、色彩を楽しみながら「花を選ぶ」「思いのままに作品を完成させる」「作品を囲んで語り合う」というプロセスで脳に刺激を与え、認知症予防や進行抑制を促すことができます。