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何が起きているの?日本の超過死亡の現実

みなさんは「超過死亡」という言葉を聞いたことはありますか?超過死亡とは、統計的に予測される死亡数よりも、実際の死亡数の方が多い状況を指します。都市より地方で拡大が見られ、死因として循環器の病気や老衰の増加が言われていますが、近年では新型コロナウイルス感染症でも多くの方が亡くなりました。今回は、日本における超過死亡の推移と現実についてご説明します。

新型コロナウイルス感染症と超過死亡

日本国内で、新型コロナウイルスの感染が初めて確認されたのは、2020年1月15日。当初は死亡数の増加が懸念されましたが、マスク着用や手指消毒、外出自粛などの新型コロナウイルス対策によって他の感染症が流行せず、死亡数は前年よりも約9,000人減少するという驚きの結果となりました。

 

しかし、2021年と2022年には大幅な超過死亡が見られています。その数は約60,000~170,000人に上ると予測され、新型コロナウイルス感染症による直接的・間接的被害は深刻なものでした。その後、ワクチン接種や治療法の進歩などによって超過死亡の顕著な増加が見られなくなり、2023年5月8日に新型コロナウイルスは季節性インフルエンザと同じ位置づけの5類へと引き下げられています。

 

超過死亡は、その年に起こった感染症や災害、異常気象などが社会に与えた影響を把握する上で重要な指標です。その超過死亡が見られていない現在は、感染症流行前の平和な日常を取り戻したことを示しています。

日本の超過死亡の現実

2023年2月以降、日本では超過死亡の顕著な増加は報告されていません。しかし、2023年の死亡数は、戦後最多となった2022年の死亡数を約21,000人も上回っています。新型コロナウイルス感染症によって甚大な被害を受けた2021年と2022年よりも死亡数が増加しているにも関わらず、2023年はなぜ超過死亡が見られないと判断されたのでしょうか。

ここでは、超過死亡が見られない理由や日本の超過死亡の現実について考えてみましょう。

高齢化による死亡数の自然増

高齢化や長寿化が進む日本では、高齢者の人口と共に死亡数も増加しています。高齢者は死亡リスクが高いため、高齢者の増加に伴う死亡数の増加は自然現象と言えるでしょう。そのため、2022年から2023年にかけての死亡数の増加も、高齢化が影響している可能性があります。

しかし、顕著な超過死亡が見られた2021年と2022年に続き、新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられた後も死亡数が増加している現状を、自然増と言えるのか疑念が生じます。

新型コロナワクチンの接種

日本では、2021年2月から新型コロナワクチンの接種が開始されました。厚生労働省によると、令和5年度までの総接種回数は436,293,341回、3回目を接種した方が全人口に占める割合は67.1%と報告されています。

 

2023年10月18日付の英科学誌「Scientific Reports」には、新型コロナワクチンの効果についてまとめた京都大学の西浦博教授らの研究成果が掲載されました。ワクチンの有効性を示唆した内容で、2021年2月~11月の日本における感染者と死者の数は、ワクチンの接種によって90%以上減り、接種のペースが14日早ければ感染者と死者の数は半分程度に抑えられ、14日遅ければ約1.5倍になっていたと報告されています。ワクチンの有効性については多くの研究報告があり、ワクチン接種率の高さが超過死亡の減少に繋がった可能性があります。

 

一方、ワクチン接種と死亡数の増加時期が重なったため、ウイルスの変異だけでなく、ワクチンの影響を危惧する意見も多く挙がりました。この見解を受けて厚生労働省は、ワクチン接種が原因で超過死亡が発生したという科学的根拠はなく、新型コロナウイルス感染拡大の影響を指摘しています。しかし、予防接種の健康被害認定数は例年100件に満たないのに対し、2024年1月31日までの新型コロナワクチンによる健康被害認定数は6,088件に上り、ワクチンが健康に与える影響については懸念が残ります。

予測死亡数の算出方法

国立感染研究所の発表する予測死亡数は、過去5年間のデータを基に算出されます。2023年の予測死亡数は、新型コロナウイルス感染症が流行した時期のデータも含まれているため、大幅に増加した予測値となりました。そして、この予測値と実際の死亡数を比較し、2023年に超過死亡が見られなかったと結論づけられています。

 

しかし、新型コロナウイルス感染症の直接的・間接的影響が含まれた予測値に、妥当性はあるのでしょうか。予測死亡数の算出方法を見直すことで、超過死亡が認められる可能性があります。

まとめ

今回は、日本の超過死亡の現実についてご紹介しました。高齢化が進む日本では、死亡数の増加は自然なことです。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行前後のデータを見比べてみると、超過死亡が見られない現状を素直に受け入れて良いものか疑念が生じます。

「感染症の影響がなくなった」「平時に戻った」と断言できない可能性もあるため、引き続き健康管理や衛生管理には気を付けていきたいですね。